二十六世観世宗家・観世清和氏による能楽特別授業を実施

立教小学校

2024/01/24

OVERVIEW

2023年9月28日、日本の伝統芸能である「能楽」の音楽特別授業を立教小学校の講堂にて行いました。講師を務めた二十六世観世宗家・観世清和氏によるお話と、卒業生の観世三郎太氏(59回生)の演技に、4年生の児童たちは身を乗り出しました。

観世清和氏は、室町時代に能楽を大成させた観阿弥、世阿弥の流れをくむ観世流の二十六世宗家として、現代の能楽界をけん引する存在です。また息子の観世三郎太氏は立教小学校の卒業生であり、幼少期から清和氏の稽古を受け、次世代を担う能楽師として幅広く活躍しています。清和氏と三郎太氏は2012年に、立教大学タッカーホールでキリシタン能『聖パウロの回心』を上演したこともあります。今回は、児童たちに「能」の世界に親しんでもらう機会として、能楽の基礎知識や魅力について実演を交えてご紹介いただきました。児童たちは事前学習として能の映像などを視聴した上で、今回の特別授業に臨みました。
冒頭では清和氏、三郎太氏、観世流の能楽師3人による仕舞(※)「羽衣」を披露。その後のあいさつで三郎太氏は「15年ぶりに母校(立教小学校)に戻り、このような機会をいただくことができてありがたく思います。皆さんに能楽のことを少しでも知ってもらえるとうれしいです」と話しました。

※仕舞:能面、太鼓、笛などを用いず、「地謡(じうたい)」と呼ばれる歌のみで舞う上演形式
清和氏は観阿弥、世阿弥が大成させた能楽の歴史や、冒頭で演じた仕舞『羽衣』の物語に触れた後、能の基本的な知識について解説。まず、能は、シテ(主役)が演じる役柄によって「神・男・女・狂・鬼(しん・なん・にょ・きょう・き)」の5つに分類されることを写真付きで紹介しました。また、能は、演目によって神聖な儀式であることに触れ「代表的な演目の『翁』は、天下泰平、国土安穏を祈る舞です。『翁』を演じる時には、肉食を断って身体を清める『精進潔斎(しょうじんけっさい)』を舞台の3日前から行います」と語りました。
次に、能を演じる際の所作を、実演を交えて紹介。基本姿勢である「カマエ」や、すり足で歩く「ハコビ」を披露した後、泣いていることを表す「シオリ」、喜びの感情を表す「ユウケン」などの所作をクイズ形式で紹介しました。
10分間の休憩を挟んだ後は、児童たちと共に歌の稽古を行いました。課題曲は、祝いの席などで歌われる祝言小謡『老松(おいまつ)』。清和氏が1フレーズ歌った後、プリントを見ながら児童たちが復唱します。慣れない経験に最初は照れ笑いをする様子もありましたが、3回4回と繰り返すうちに大きな声で堂々と歌う姿が見られました。歌を覚えた後、児童たちの歌に乗せて、清和氏と三郎太氏が舞を演じました。
続いて『土蜘蛛(つちぐも)』という演目を披露。和紙で作られた蜘蛛の糸が飛び交うダイナミックな舞を、児童たちは驚きの声を上げながら鑑賞しました。最後に観世清和氏はこのように語りました。

「最初に観ていただいた『羽衣』のような静かな演目もあれば、『土蜘蛛』のように小道具を使いながら大きく動く演目もあります。能に興味を持ったら、ぜひ能楽堂にも遊びにいらしてください。今日、一緒に歌った『老松』は、またお稽古をして大きな声で歌えるようにしておいてくださいね」

後日、児童たちは事後学習として『老松』を練習するとともに、能の世界への理解をさらに深めました。

プロフィール

二十六世観世宗家
観世 清和(かんぜ きよかず)

1959年東京生まれ。1990年家元継承。室町時代の観阿弥、世阿弥の流れをくむ観世流二十六世宗家として、現代の能楽界をけん引。新作能にも意欲的に取り組み、2012年には立教大学でキリシタン能「聖パウロの回心」を初上演した。2023年11月、文化功労者。

観世 三郎太(かんぜ さぶろうた)
1999年東京生まれ。父の二十六世宗家観世清和氏に師事。子方(子役)として多くの舞台で経験を積み、2009年初シテ(主役)を務める。立教小学校、立教池袋中学校・高等学校を経て、立教大学法学部を2022年卒業。2022年6月、『翁』のシテを初演。

※ 本特別教室は、文化庁「文化芸術による子供育成推進事業」の「舞台芸術等総合支援事業(学校巡回公演)」の一環です。
※ 記事の内容およびプロフィールは、取材当時のものです。

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