10年経って振り返る、立教池袋中高の学びと魅力——卒業生座談会

塩澤 慶祐さん(住友商事株式会社)× 高橋 優輔さん(東京武蔵野病院)× 林 舜也さん(大手広告代理店)

2023/12/21

OVERVIEW

2014年に立教池袋高等学校を卒業した塩澤慶祐さん、高橋優輔さん、林舜也さん。中学・高校をともに過ごし、高校卒業から10年たった今でも交流が続いている3人に、社会人としてさまざまな経験をした立場から、本校での学びや魅力について本音で語り合っていただきました。

※海外駐在やリモートワークなど働き方が異なるため、座談会はオンラインで開催しました。

中高一貫校で出会った、なんでも語り合える生涯の友

高校野球部で仲間と試合に臨む、塩澤さん

塩澤 僕は立教池袋中高で良かったと思うことが三点あって、一つ目は学校生活、野球部の活動、友人との思い出づくりなどに情熱を注げたこと。受験がない分、周辺のノイズが少ない環境下で日々の出来事に一喜一憂できたのは貴重な時間だったし、僕の人格の礎になっていると思う。
二つ目は大学入学がゴールにならなかったこと。受験勉強疲れによる燃え尽き状態に陥ることがないので、大学やその先のキャリアを念頭におきつつ、充実した日々が送れたと思っている。
三つ目が一番大事なんだけど、(高橋)優輔や(林)舜也をはじめ、強い絆で結ばれた友達ができたこと。気軽になんでも話せて、お互いの仕事や考え方を尊重し合える友達は、人生における大きな財産だと思っている。

高橋 「仲間感」は強いかもしれないね。多感な時期に同じ経験を重ねた友達がいて今でも昔のことを語り合えるのは、中高一貫校ならではかもしれない。

 僕は、他人と自分を比べない人格形成が自然とできたことが立教池袋中高の良さだと思っている。付き合いが長い分、お互いを比較してどうこうというのが少なかった気がするし、人を妬まない性格になったと思う。
受験校に比べて競争力で劣っている印象があるけど、言い換えると競争がモチベーションになっていないと思うんだよね。それよりも、自分の好きなことや学びたいことを突き詰めたいって部分がモチベーションだったと思わない?

高橋 まさしく、そう思う。立教池袋では、何かを突き詰めているほうがかっこいい、っていう文化があったよね。誰かに勝つためではなくて、自分らしくやっていくためにみんな頑張っていた。そこが大好きだったな。

塩澤 そのうえで、自分のことだけじゃなくて、みんなで支え合える環境があったね。

内部進学組※も受験組もなく、気づけば自然に打ち解けていた

卒業式で仲間たちと笑顔をみせる、林さん

 中高一貫校っていうと、内部進学組と受験組の関係を気にする人もいると思うんだよね。そのあたりはどう思っていた?

塩澤 僕は小学校からの内部進学だけど、立教池袋は人数が少ないこともあって、内部進学組とか受験組とか関係なくいろいろな個性が混じり合っている環境だったと思う。確かに中学入学直後の1、2カ月は様子見みたいなところもあったけど、すぐに混じるというか、ボーダーラインはまったく感じなかった。僕が入っていた野球部はほとんど中学から入学した友達ばかりだったし。

高橋 僕も内部進学だけど、気を使ったのは本当に最初だけ。中学受験してきたみんなも最初は戸惑っていたと思うけど、最終的には内部進学組・受験組関係なく仲良く過ごしていたよね。今となってはお互いにとって良い刺激だったと思う。

 僕は2人と違って中学受験組だけど、初めての私立校だから「どんなところかな」「どんな人たちなんだろう」って最初はすごく緊張していた。でも、すぐに打ち解けられたのは、ゴルフ部に入って部活のコミュニティーができたことも大きいけれど、みんなが個性やバックグラウンドの違いに興味を持って接してくれたのが一番の理由だと思う。そういうのを自然と受け入れられる環境ってすごく素敵だなって思った。

塩澤 舜也は緊張していたみたいだけど、内部進学組のほうも、受験勉強をしてないから不安だったんだよね。

高橋 そうそう。小学生の時に「賢い人たちが入ってくる」「(受験組は)みんな賢いから勉強しなさい」なんて言われたりして(笑)

 そうなんだ。知らなかった(笑)最初はそれぞれの立場で不安があったけど、いつの間にかそんなこと忘れて仲良くなっていたってことだね。

※内部進学組:立教学院は立教小学校から立教大学までを組織しており、卒業後に上位の学校に進学する者をこのように呼ぶ。本ページでは立教小学校卒業のこと。

今の仕事にも生きている立教池袋中高での学び

高橋 社会に出て感じるのは、中学・高校時代に考えたことが全部、今の仕事に役立っていること。僕の一番好きな時間は礼拝だったんだけど、静かな時間の中で自分に向き合えたのが大きかった。一方で、自分に向き合うためには他者と関わることも必要で、立教池袋には授業や課外活動を通じてそういうことを考える機会がたくさんあった。世の中にはいろいろな価値観があり、みんなさまざまな悩みを持っているんだと思えるようになったことが、確実に今に生きている。

 僕は広告代理店で、多くのステークホルダーと関わりながらプロジェクトを推進する中で、周りの声に流されるのではなく、「どうしてこれをやるのか」「これは世の中に本当に良いことなのか」と、自分なりの意志や正解を持つことを大切にしている。そういった主体性や思考のベースは立教池袋で培われたように思う。
塩澤 分かる。総合商社は利害の異なる複数の関係者の間に入り、他社を巻き込みながらそれぞれのゴール達成に向けて導いていくような働き方、言い換えれば「しなやかさ」が求められる仕事だと思っているんだけど、立教池袋で培ったコミュニケーション力や相手に寄り添える柔軟性が生きているかな。
ただ、人に合わせ過ぎるのもよくないから、舜也が言ったみたいに「自分がこうありたい」という芯を持っておくことも大切。立教池袋での学びが、そういう考え方につながっているのかもしれない。

 中高での選択授業とか、キャリア学習、卒論制作など、総じて自分でテーマを設定するプログラムが多かったから、そこでの経験が、早い段階から自分と向き合うきっかけになっていた気がするよね。
高橋 そうだね。自分が本当に好きなこと、突き詰めたいことを折に触れて考える機会や、自分のアイデンティティを問われるタイミングが多かった。

塩澤 授業選択や大学の学部選びなど、その都度自分が何をしたいのか考える必要があって、それによってどんどんブラッシュアップされていくようなイメージかな。今もブラッシュアップし続けているつもりだけど、そのベースとなるものが高校の時にできた気がする。
今振り返っても、経営論や国際関係、観光学など、自由選択講座は本当におもしろかったなぁ。視野を広げることにつながったし。優輔は東京大学に進学したけど、中学校からの選択授業とかが影響している部分はあったりするの?

高橋 もちろん。東大では入学してから専門分野に限らないいろいろなことを学ぶ機会があったけど、立教池袋での生活の選科や自由選択で興味を持った幅広いことがルーツになって、とても楽しい大学生活を送れたな。それに、「勉強ばかりしていて格好悪い」とか言われることがなかったから、のびのび勉強できたのも良かった。先生方も非常にサポーティブでやりたいようにやらせてくれたし、周りのみんなが応援してくれたのも大きかった。だから、外部の大学への進学を考えている人に「大丈夫、その選択をとってもみんな味方だよ」と伝えたい。

個性を磨き、共に生きる。バランス感覚が魅力

校長からタッカー賞※を表彰される、高橋さん(※タッカー賞は、在学中、学業に励むのみならず、生徒会活動・学友会活動の三部門に幅広く積極的に取り組み、充実した学生生活を送った生徒に授与されるもの)

塩澤 改めて立教池袋の魅力を考えてみると、「個性を磨くこと」と「他者と共存する能力を身につけること」のバランスがうまくとれている環境なのかなと思った。それを支えるカリキュラムがあって、先生や友達がいたおかげで、個性と他者への気持ちのバランス感覚が養われたように思う。

 そうだね。僕も突き詰めると塩澤とまったく一緒なんだけど、「テーマをもって真理を探求する」「共に生きる」の2点におけるマインドセットが培われるところが魅力だと思う。テーマをもって真理を探求するには、自分なりの芯や軸を持つことがすごく大事だし、それだけでは楽しくないから他者を受け入れて共に生きることも大切だと教えてもらった。
高橋 今でも、確固たる軸やなんらかのテーマを持って生きている仲間が多いと思う。マイペースな人が多いからあまり群れることは少ないけれど、苦しい時には結束して支え合う。そんな個性や愛情の豊かさは、それぞれの場所で生かされていると、自分を振り返っても、周りを見ていても思う。そこも踏まえて、魅力を一言であらわすなら「愛」だね。今でも立教池袋の人と会うと周りへの愛が深いと感じる。

 うん。だから、今、そしてこれから立教池袋で学ぶ人には、好きを突き詰めることはもちろん、食わず嫌いせず、たくさんの人やカルチャーにアクセスする器を広げることに取り組んでほしい。回り道することが人の幅を持たせてくれるし、それを許容してくれる環境があると思うから。

塩澤 そのために行動力を持つことも大事だと思う。居心地よい環境を変化させる行動には勇気が伴うし、失敗するリスクもあるから頭でっかちになりがちだけど、思い切って一歩を踏み込めば学びは多い。立教池袋にはそれらを妨げず、むしろサポートしてくれる環境があるし、周りには寄り添ってくれる友人がいると思うので、どんどんチャレンジしてほしいですね。

プロフィール

塩澤 慶祐
立教小学校(55回生)
立教池袋中学校・高等学校(2014年卒業)
立教大学経営学部国際経営学科(2018年卒業)
しおざわ けいすけ/中高時代は野球部の活動に情熱を注ぐ。大学卒業後、住友商事株式会社入社。都内のオフィスビル開発事業に5年間従事した後、2023年6月より海外不動産事業部の派遣員としてニューヨークに赴任。アメリカにおけるオフィスビル事業に従事している。
高橋 優輔
立教小学校(55回生)
立教池袋中学校・高等学校(2014年卒業)
東京大学医学部医学科(2020年卒業)
たかはし ゆうすけ/中高生の頃の経験から、人の心に向き合う仕事として精神科医を志す。東京大学医学部在学中に学部長賞を受賞。東京大学医学部附属病院精神神経科で思春期のこころなどの研究をしながら、東京武蔵野病院精神科で臨床に打ち込んでいる。
林 舜也
立教池袋中学校・高等学校(2014年卒業)
立教大学法学部法学科(2018年卒業)
はやし しゅんや/立教池袋高校のキャリア学習プログラムで広告業界を知り、興味を抱いたことをきっかけに、大学卒業後、大手広告代理店へ入社。商品ブランディング・プロモーション等の統合的な領域から、ToB企業のリブランディングや新規事業立ち上げなど幅広くプロデュースする。

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