創立150周年によせて

立教学院理事長 福田 裕昭×立教学院院長 立教大学総長 西原 廉太

2023/10/31

OVERVIEW

2024年、立教学院は創立150周年を迎えます。歴史と伝統を礎としながら、あらゆる分野の学びをつなぎ、共に生きる未来をつくる取り組みを進めています。立教の成り立ちや創立者の思い、現在とこれから、記念事業などについて学院の理事長と院長・大学総長が語り合いました。

※こちらは大学広報誌、季刊「立教」265号特集での理事長と院長・大学総長による対談のロング版となります

150周年事業の目標「創立から150年の歴史・伝統を礎とし、世界を先導する立教を創る」

西原 立教の歴史は、米国聖公会の宣教師チャニング・ムーア・ウィリアムズが1874年に創立した「立教学校」から始まります。ウィリアムズ主教によってまかれた種が、150年の歴史の中で成長した姿が今の立教です。その種は「精神」であり、それを常に私たちが再確認しながら、深化させていくことが求められます。時代に応じて変化を続けることこそ、立教の伝統ではないでしょうか。立教の礎である聖公会の歴史は、現在のイギリス国教会のカンタベリー大主教が着座する597年までさかのぼることができます。時間と空間を超えたつながりの中に現在の立教があることへの誇りを今、改めて感じています。

福田 ウィリアムズ主教の生涯を語る時に「道を伝えて己を伝えず」という言葉が使われるように、回顧録や自身に関する書物は残されていません。それでも私たちは創立者に思いをはせながら進んでいく必要があると思います。「世界を先導する立教を創る」とは壮大な目標ですが、世界を意識することは大切です。ウィリアムズは江戸時代に長崎へたどり着き、わずか1年3カ月で日本語を話すことが出来るようになりました。そして、日本の要人にさまざまなことを伝授します。例えば、高杉晋作に米国の民主主義を伝え、大隈重信に英学と聖書を教え、前島密にアメリカの郵便制度について語りました。今、小・中・高・大※では「グローバルリーダーの育成」を進めていますが、そもそもウィリアムズ主教自身がグローバルリーダーだったといえるでしょう。

※小・中・高・大:立教小学校、池袋中学校・高等学校、新座中学校・高等学校、立教大学

西原 教育とは一人ひとりの人格を陶冶し、社会や世界に福利をもたらす尊い働きであるという考えをウィリアムズ主教は大切にし、リベラルアーツに基づく全人格的な教育の重要性を訴えました。本学では真のリベラルアーツ教育に1870年代から取り組んできたのです。私たちは、このことに自信と誇りを持ち、未来につないでいきたいと思っています。

福田 「つなぐ」という意味では、小・中・高・大、大学院、立教セカンドステージ大学で学ぶ人や、保護者、卒業生、教職員など、あらゆる「立教人」が生涯にわたって「立教らしさ」を体現していただくことが大切です。それぞれが感じる立教らしさを引き継ぎ、周りに伝えていただくことで、新たな伝統として受け継がれていくのではないでしょうか。

立教学院理事長 福田 裕昭

西原 立教学院では、「テーマをもって真理を探求する力」と「共に生きる力」を育むことを共通の教育目標に掲げ、一貫連携教育に取り組んでいます。各校の自主性を保ちつつ、立教ならではの教育を一層進めるために、2023年4月には一貫連携教育推進室を立ち上げました。これからもキリスト教に基づく人間教育を丁寧に行い、多様な個性や可能性を持つ人間を育てていきたいと考えています。

福田 「テーマをもって真理を探求する力」ですが、テーマを自由に選ぶことができる点は、「自由の学府」といわれる立教らしさではないでしょうか。「共に生きる力」は、キリスト教の基本的な考え方である「隣人愛」にも通じるものです。立教のキャンパスがある、池袋や新座の地元住民の方とも手を取り合いながら、地域と共に生きていくことを大切にしてほしいと思います。

記念事業と、これから歩むべき針路について

西原 現在、さまざまな記念事業や計画を進めています。大学では「環境」をテーマに文理融合を実現する「環境学部(仮称)」を、2026年4月に池袋キャンパスに設置することを構想中です。全学的な学びの面では、全学共通の学びのプラットフォーム「RIKKYO Learning Style」の深化を掲げています。リーダーシップ教育やグローバル教養副専攻、サービスラーニング、データサイエンスといった学びに全学部の学生が、よりアクセスしやすい形を整えていきます。新座キャンパスでは2023年4月に開設したスポーツウエルネス学部の拠点となる新棟を建設中です。「ウエルネス」や「インクルーシブ」といったキーワードを体現した、充実した施設になることを期待しています。立教小学校でも「自律・協奏する力と心を育む真正な学び」をコンセプトとした新校舎の建設を計画しており、立教学院全体にとって大きな発展になることでしょう。

福田 創立150周年にあたり、ウィリアムズ主教の生き方や思想について考える企画を検討しています。「国際化の取り組み」も重要なテーマで、立教が誇る最先端の英語教育を受け、世界で活躍するリーダーが育ってくれることを期待しています。私は中・高・大の10年間を立教で学び、今、理事長という立場になりましたが、立教の良さを一言で表すと「しなやかな人」を育てる教育だと思っています。漠然とした言い方ですが、課題を解決する力や人の話をよく聞いて物事をまとめる力なども、しなやかさといえるのではないでしょうか。誰かの言うことにただ従うような人間ではなく、一人ひとりが豊かな個性を持っている。そして、それをお互いに認め合える。立教は、そのような人間が育つ学校であり続けたいと願っています。

西原 聖公会は「ヴィア・メディア」(「中道」を意味するラテン語)の考え方を大切にしており、カトリックとプロテスタントの間を行く教派だと表現されることがよくあります。あらゆる絶対主義をとらず、「聖書」「伝統」「理性」の三つを道しるべとする。そして自分たちを「真理を探求する道を歩み続ける旅人」だと位置付けているのです。これは「変化を恐れない」「批判を恐れない」「何事も固定化・絶対化しない」といった立教の精神にもつながっています。

立教学院院長 立教大学総長 西原 廉太

福田 2022年8月に理事長に就任した際に、改めて立教の成り立ちや歴史について学びました。その時に感じたのが「伝統を守るためには変わり続けないといけない」ということです。私はテレビ局に40年近く勤務し、さまざまな番組の企画・制作に携わってきました。その中で培ったアイデアを生み出すノウハウのようなものが、母校の運営に生かせるのではないかと考えたのです。西原先生や立教の各校長、関係者の皆さんと柔軟に協力しながら、立教の伝統を守り、さらなる発展に寄与できればと思っています。

プロフィール

立教学院 理事長
福田 裕昭 
FUKUDA Hiroaki

立教中学校、立教高等学校、立教大学経済学部(1984年卒業)を経て、株式会社テレビ東京入社。政治部長、執行役員報道局統括プロデューサー、上席執行役員報道局長などを歴任。2022年8月より現職。
立教学院 院長
立教大学 総長
西原 廉太 
NISHIHARA Renta

文学部キリスト教学科教授。博士(神学)。専攻は、アングリカニズム、エキュメニズム、組織神学、現代神学。キリスト教学校教育同盟第28代理事長。日本私立大学連盟常務理事。

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