鉄道のある風景を楽しむ-立教池袋高等学校鉄道研究部

立教大学観光学部交流文化学科 松村 公明教授 × 中山 裕太さん × 中野 遥葵さん

2021/12/17

OVERVIEW

立教池袋高等学校鉄道研究部は、同好会として設立された2014年以降、数々のコンテストで上位入賞を果たし、20年度※1には第12回全国高等学校鉄道模型コンテストで優秀賞・ベストムービー賞・ベストリアル情景賞の3冠を達成し、20年9月から部に昇格しました。今回は、鉄道研究部で活動する高校生2人と、自身も「乗り鉄」を称する立教大学観光学部の松村教授が語り合いました。

※1 21年度は同コンテストにてベストクリエイティブ賞・ベストムービー賞を受賞しました。

広がる鉄道の楽しみ方

(左)立教池袋高等学校 2年生 鉄道研究部 中野 遥葵さん、(中)立教池袋高等学校 3年生 鉄道研究部 部長 中山 裕太さん、(右)立教大学観光学部 交流文化学科 松村 公明教授

松村 鉄道研究部に入部したきっかけは何ですか?

中野 模型が好きで、景色を自分の手で作りたいと思ったことがきっかけです。鉄道研究部の存在を知り中学2年から入部しました。幼い頃から電車に乗って出掛けるのが好きだったことも理由の一つです。

中山 ずっと鉄道が好きだったので、中学入学と同時に迷わず入部しました。鉄道研究部があったから立教を選んだとも言えるかもしれません。鉄道以外の乗り物全般に興味が広がり、地理の授業も好きになりました。

松村 鉄道で旅をすると、場所と場所、地域と地域の結び付きを体験的に知ることができ、まさに地理の授業ですよね。現在はコロナ禍で移動が制限される日々ではありますが、部ではどのように活動していますか?

中山 現在は週1回、各部員が興味のある鉄道について紹介し合ったり、好きな車両模型を持ち寄って運転会を行ったりしています。それぞれ好みの車両や路線があり、模型好きや旅行好き、撮影が好きな人もいるので、自分が感じる魅力を伝え合うことで興味が広がります。鉄道旅行や車庫見学に行くこともあります。

中野 僕は模型コンテストを目指して制作に力を入れています。模型制作班は、週1回の全体での活動に加え、長期休暇の期間を中心に精力的に活動しています。鉄道のある街の風景ができあがっていくのは楽しいです。

第12回鉄道模型コンテストで授与された賞状とトロフィー

松村 いわゆる「乗り鉄」「撮り鉄」など鉄道の楽しみ方はさまざまです。撮り鉄の中でも、貨物列車や路面電車、駅舎など撮影対象は人それぞれ。興味の方向が異なる皆さんが一緒になって活動しているところに、ダイバーシティを感じます。

中山 現在の部員は中高合わせて20人ほど。模型制作は経験が大切なのですが、先輩から後輩へとしっかりノウハウが継承されているのは立教ならではの強みだと感じています。

中野 他にも、立教学院内で年1回行われる鉄研サミット※2では、大学・新座中高・池袋中高の鉄道関連の団体が参加し交流します。縦・横のつながりがあるのも特徴だと思います。

※2 鉄研サミット:新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、2020年度は中止、2021年度は開催未定となっています。

街を俯瞰し、旅から学ぶ

第12回全国高等学校鉄道模型コンテスト受賞作品。兵庫県の城崎温泉駅周辺をモチーフに制作

松村 皆さんが作った鉄道模型を拝見しましたが、街の広がりやそこで暮らす人々の情景が想像でき、とても楽しめました。模型コンテストに参加した経験はいかがでしたか?

中野 街の雰囲気をよりリアルに伝えるため、模型の構成やライトアップの仕組みなど、みんなのアイデアを盛り込み細部までこだわって作りました。

中山 鉄道を魅せるために街の景色をデフォルメし、森林のボリュームを増やし、線路の位置を調整するなどして臨場感が出るように工夫しました。20年のコンテストはリモート開催で、動画でのエントリーだったので、映像で全てを伝えられるよう意識しました。ここ数年で一番いい賞を取れて感激しました。

松村 私の研究分野である地理学では、鉄道は都市を形成する要素として捉えます。高台から街を見下ろすとその道筋が見え、新たな発見があります。街全体を俯瞰する視点は鉄道模型にも通じるところがありますね。地理学は「場所」を扱う学問ですが、そこでの暮らしや街の景色も研究対象です。鉄道を通して文化に触れるのも、良い学びになるでしょう。

中山 旅先でも街歩きは大切にしています。海外旅行でも、現地を知り、体感するために意識して鉄道を利用しました。

松村 まさにその視点が、観光学の一つだと思います。観光学部の中でも交流文化学科は、地理学や社会学、人類学などの隣接分野から文化としての観光にアプローチします。特に地理学は景観観察、すなわち目に見えるものを手掛かりとして、観光を巡る場所や地域を空間的に考察することを得意としています。これからチャレンジしてみたいことはありますか?

LED電球による建物内部からの仄かな明かりなど、精緻な作り込みと制作動画が高く評価され、池袋のホテルメトロポリタンフロント・ロビーでの展示も行われた

中野 鉄道で日本全国を旅して、その土地の文化や魅力を知りたいです。部としては、模型だけでなく鉄道写真コンテストなどにも挑戦し、活動の幅を広げたいです。

中山 部員それぞれの好きなことを生かして部を発展させたいです。部長として仲間と協力することや、後輩たちを取りまとめることでリーダーシップやマネジメントにも興味が出てきました。

松村 興味を追究していくことはとても大切です。中高生・学生のうちに、「気付いたら朝になっていた」というくらい熱中する経験をしてほしいです。そして部活動からさらに外部へ世界を広げ、鉄道をはじめそこから見えてくる地域の魅力を多くの人に伝えてほしいと思います。

※本記事は、『立教学院NEWS』Vol.39(2021年10月)の記事を再構成したものです。記事の内容およびプロフィールは、取材当時(2021年8月10日取材)のものです。

プロフィール

PROFILE

松村 公明

まつむら こうめい/立教大学観光学部交流文化学科教授。地理学を専門とし、特に都市を対象地域とする観光地理学を研究領域とする。フランス諸都市やベトナム・ホーチミンをフィールドに研究を進めている。



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