言語の豊かさに触れ
自ら学ぶ意欲を引き出す外国語教育

立教小学校の先駆的な取り組み

2020/06/22

OVERVIEW

グローバル化の急速な進展に対応すべく、国が推進する教育改革により、小中高における外国語教育のあり方が大きく変わろうとしています。立教学院では、創立当初より英語をはじめとした外国語教育に力を注ぎ、時代の一歩先を行く取り組みを進めてきました。
今回は、一貫連携教育の入り口であり、特色ある英語教育が高く評価されている立教小学校の現在について、同校英語科主任の天野英彦先生にお話を伺いました。

「時代を先取する」という伝統

立教小学校の特徴的な英語教育例

2020年度より新学習指導要領に基づき、全ての小学校で3年生から外国語に親しむ活動を実施、5年生から英語が教科化されました。立教小学校ではさかのぼること72年前、1948年の設立当初より、1年生から英語を学び、異文化への理解・関心を育む教育を推進しています。

「当時からいまに至るまで、常に他校に先駆けて新たな教育法を導入してきた歴史があります」

そう語るのは、同校英語科主任の天野英彦先生。立教小学校は、現在も、立教学院の英語一貫連携教育における3つの共通目標「発信型の英語力」「コミュニケーション能力」「異文化理解と対応」を軸に、特色ある教授法やテクノロジーを取り入れた独自の英語教育を展開し、先駆的な事例として、教育改革への対応を急ぐ他校からも注目されています。

歌や踊りを通して英語の豊かな世界を体感する

歌や踊りを通して英語の音やリズムを 体で覚えるETMの授業

立教小学校の英語教育における特徴的な取り組みの一つが、ETM(Education Through Music)です。英語圏のわらべ歌を使った遊びを通して自己肯定感を育み、人と関わる素地を養うプログラムで、現在は1・4・5年生で実施。授業中は全員で輪になって歌ったり、ゲームをしたり、歌声とにぎやかな笑い声が教室に響き渡ります。

「扱う曲は、ネイティブが子どもの頃に接するようなものばかり。児童たちは夢中で歌い、遊びながら、自然と歌の世界や物語の中に入っていきます。知識を積み上げる前に、小さい頃から『本物』に触れ、まずは英語の世界の豊かさを体感してもらうことがETMの目的なのです」

さらに天野先生によると、ETMは外国語習得に対する心理的な壁を取り払う役割も果たしているといいます。
「普段から歩くジュークボックスと化している児童もいるのですが(笑)、のびのびと英語の歌を歌う子どもたちは、異なる言語に対する構えがありません。心のバリアをなくすことで、外国語をためらいなく話せる素地が養われているように思います」

iPadやプログラミングを取り入れたクリエイティブな学び

英語の授業内で、iPad miniを用いて動画制作や作曲、発表資料の作成などを行う

英語科では、ICT機器を用いた学習にも早い段階から取り組んできました。特に、3年生以上の全児童が所持しているiPad miniを積極的に授業で活用しています。

「特色は、教科書代わりに使う『教材』としてではなく、表現や創作の『道具』として使用している点にあります」と天野先生は力を込めます。英語の自己紹介動画をつくったり、Keynoteで資料を作成してグループ発表を行ったり。児童はタブレットを駆使して、英語学習の枠を越えた多彩な学びに挑んでいます。

「英語を学ぶと同時に、自ら考え表現する楽しさや、周囲からフィードバックをもらう醍醐味を知ってもらいたいですね。一生懸命つくった作品だからこそ、英語で発表するときも『伝えたい』という意欲が芽生えているように思います」

同じくクリエイティブな学びの一環として、17年度からはプログラミング学習を導入し、英単語のコマンドを正しい順番で並べてキャラクターを動かすなど、パズル感覚で楽しめる「Swift Playgrounds」というアプリを用いて学んでいます。

「プログラミングは、トライアンドエラーを繰り返す作業。子どもたちは自ら試行錯誤し、分からないことがあればお互いに教え合っています。いままで以上に主体的かつ活発なコミュニケーションが生まれたのはうれしい変化でした」さらに天野先生は、英語に苦手意識を持つ児童が積極的にプログラミングに挑戦している姿に驚いたといいます。

「英語にそれほど関心がなかった子が、『ここはTurn leftして』『Move forwardだよ』と自然に話していて(笑)。プログラミングをきっかけに英語が好きになり、留学した児童もいます」こうした経験から、「英語は教わるものではなく、自分でできるようになるものだという思いが強くなった」と天野先生。

「言語学習で大切なのは、子ども自身が『学びたい』という意欲を持ち、『自律的な学習者』になることです。そのために、試行錯誤できる時間や環境を用意し、精一杯後押しをするのが我々教員の役割。いわば、ラーニングアドバイザーのような存在といってもいいかもしれません」

英語を生涯学び続ける土台づくりを

ネイティブ教員による授業

これら以外にも、立教小学校では全学年でネイティブスピーカーの教員による授業を実施しているほか、立教大学の外国人留学生との交流の場を設けるなど、学んだ言語を使い、異文化に触れる機会を多数用意しています。

「ネイティブの先生方は子どもたちを大らかに受け入れ、コミュニケーションに対する前向きさをうまく引き出しています。一方、さまざまな国・地域から来た留学生との交流では、英語にとどまらない多様な言語・文化と出合い、世界に目を向ける良いきっかけになっています」

外国語教育が転換期を迎える中で、時代に先駆けて多彩な取り組みを推進している立教小学校。その根底には、「生涯にわたって英語を学び続けてほしいという思いがある」と天野先生は話します。

英語科の教室の壁に貼られた会話カード

「一番重要なのは、Lifelong learning、一生を通じて言語を学び続けること。そして、世界の人々と良好にコミュニケーションできるBetter communicator になることです。その入門期だからこそ、言語学習の楽しさに目覚め、自分に合った無理のない学び方を身に付けてほしい。今後も新たな試みを積極的に取り入れながら、立教小学校ならではの外国語教育を実践していきたいと思います」

立教大学の外国人留学生との交流

授業や給食を通して親睦を深める

プロフィール / PROFILE

天野 英彦
立教小学校 英語科主任

あまの ひでひこ / 立教小学校(29回生)、立教中学校・高等学校、国際基督教大学卒業。立教英国学院の教員を経て、立教小学校に着任。2017年、Apple製品を用いて先端的な教育を行うApple Distinguished Educatorに認定。

立教学院各校の外国語教育

立教池袋中学校・高等学校

英語の4技能をバランス良く鍛え、自ら発信する力を養う
少人数での英語の授業を週7時間行い、ネイティブ教員も6人と充実。「聞く、話す、読む、書く」の4技能をバランス良く身に付け、英語で自己表現する力を習得します。

POINT
  • 通常の検定教科書以外に、より実践的で実用的な高水準の英語教材(ESL・EFL)を使用
  • テーマに沿って英語で発表を行う「英語プレゼンテーション」を実施(中学3年)
  • 英検2級以上の取得率90%(2019年度実績)

立教新座中学校・高等学校

英語+英語以外の9言語を、興味・関心やレベルに応じて学べる
中学から自ら考え発信する機会や異文化に触れる体験を豊富に用意。高校3年の自由選択科目では、英語に加え幅広い言語を学ぶことができます。

POINT
  • 中学1年から英語の授業に習熟度別クラス、ネイティブ教員による英会話授業を導入
  • 1年間の長期留学やワンターム留学、短期の海外研修プログラムのほか、留学生の受け入れを実施
  • 高校3年次に、第二外国語を9言語(スペイン語、朝鮮語、ロシア語、アラビア語、ラテン語、ドイツ語、フランス語、中国語、イタリア語)から選べる

立教大学

2020年4月より、新たな英語教育カリキュラムがスタート
これからのグローバル社会で求められるもう一歩進んだ英語運用能力を養うため、10年前から1年次で実施している少人数クラスによる「英語ディスカッション」科目に加え、2020年度から「英語ディベート」科目を新設し、英語でロジカルに考え議論する力を養成。2年次以降は「CLIL科目」「学部EMI科目」を通して、学部の専門領域を英語で学ぶ力を身に付けます。
1年次
必修に「英語ディベート」科目を新設
  • 社会問題について英語で討論
  • 英語で論理的・批判的に考える力を鍛える
2~4年次
学部の専門領域を英語で段階的に学ぶ
  • CLIL(内容言語統合型学習)科目
    専門領域の学習と言語学習を組み合わせ、基礎的な力を養う
  • 学部EMI科目
    学部・学科が英語で開講する専門科目
※本記事は、『立教学院NEWS』Vol.35(2020年6月)の記事を再構成したものです。記事の内容およびプロフィールは、取材当時のものです。

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