社会と共に生き、貢献する学び

立教学院の社会連携教育

2018/10/12

OVERVIEW

立教学院の一貫連携教育では、地域・社会への貢献活動、教室を飛び出して現場で学ぶフィールドワークなど、社会と連携した実践的な学びの機会を多数設けています。
その背景にある理念、そして立教大学の新たな試みである「立教サービスラーニング(RSL)」をはじめとした学院全体の取り組みについて、西原廉太副院長に伺いました。

他者のために行動できる人へ

「キリスト教に基づく人間教育」を建学の精神に据える立教学院では、他者のために尽くし、行動する精神を伝統的に重視してきました。立教のオフィシャルシンボルの中央には、「PRO DEO ET PATRIA」というラテン語の教育理念が記されています。我々はこれを「普遍なる真理を探究し、私たちの生きるこの世界、社会、隣人のために」と捉え、一貫連携教育においては、「テーマをもって真理を探究する力」と「共に生きる力」を育むことを教育目標として掲げています。私たちは誰と共に、誰のために生きるのか。そのために、自分には何ができるのか。こうした問いに、小学校から大学まで一貫して向き合い、自らの問いに対する発見を促し、社会へと送り出していくことは、立教学院の揺るぎない使命なのです。

この前提に立ち、世界、社会、隣人と「共に生きる力」を育むため、立教では実社会のフィールドで学ぶ体験学習を不可欠なものとして位置付けています。現場に身を置き、そこに生きる人々が抱える問題を目の当たりにする経験は、自らの存在を見つめ直し、他者の痛みに寄り添う心を育む契機となるでしょう。創立当初から盛んに実施してきたキャンプやボランティア活動をより深め、発展させる形で、現在も学院各校において多彩な社会連携教育を実施しています。

一貫連携教育ならではの取り組みと 「立教サービスラーニング(RSL)」

立教小学校、池袋・新座の両中学校・高等学校では、地域社会あるいは海外と連携し、多岐にわたるボランティア活動や校外学習などのフィールドワークを実施しています(P3)。また、立教学院全学校の児童、生徒、学生、教職員が参加するプログラムとしては、「清里環境ボランティアキャンプ」が挙げられます。これは環境整備に関わるボランティア活動を行う2泊3日のキャンプで、学校の枠を越えた交流を通して、社会貢献や自然環境の重要性を理解することを目的としています。こうした体験学習を小中高の間に経験することで、自らを取り巻く社会に対する新たな視点が得られ、他者のために行動する精神の素地が養われます。

さらに立教大学においては、新たな社会連携プログラム「立教サービスラーニング(RSL)」を2016年度に開設しました。従来の社会貢献活動の発展形とも言えるRSLは、大学の知を社会に生かすと同時に、現場での経験を学びや研究に還元し、社会の担い手としてのシティズンシップ(市民性)を磨く科目です。単位が認定される正課授業であり、全学部の学生が受講できる点が大きな特色です。

RSLは講義系科目と実践系科目に分かれ、講義系科目では、社会連携の在り方や基礎知識について理論と事例の両面から学びます。実践系科目では、自治体や企業、NPO法人などの支援・指導の下、実際に都市部や農村部、海外に出向いて地域課題の解決に取り組みます。一般的なボランティアとは異なり、体験学習の前後には、学内で「事前学習」と「事後学習」を実施。特に後者は自らの体験を言語化し、学問的に意味付ける作業として重要な役割を担っています。
清里環境ボランティアキャンプ
2004年度にスタートした、立教学院全学校の児童、生徒、学生、教職員が関わるプログラム。夏季に山梨県清里高原で2泊3日のキャンプを行い、寝食を共にしながら自然体験学習やボランティア活動を実施。環境問題への関心を高め、自然と共に生きる方法を学びます。
数字で見る立教

卒業後の人生に生きる力を

上 / 通学路にある谷端川緑道の美化活動を年2回実施(立教小学校) 左下 / 群馬県のグループホーム「高山の家」にて、2泊3日のワークキャンプ(立教池袋中学校・高等学校) 右下 / 大学と連携し、近隣地域との交流やボランティア活動に参加(立教新座中学校・高等学校)

現場を「第二のキャンパス」として学ぶRSLでは、体験学習ならではの豊かな学びが得られますが、そこで養われる力の一つが「社会を読み解く力」です。例えば、新潟県南魚沼市の「限界集落」と言われる地域で除雪を行うプログラムでは、現地の方々との語らいや心の触れ合いを通して、人々が置かれている環境や日本の社会構造に対する自分なりの視座が形成されるでしょう。インターネットで流布されている情報を鵜呑みにするのではなく、自分の目と足で確かめ、自分で解釈し、自分の言葉で語ること。それは立教学院の教育目標の一つである「テーマをもって真理を探究する」姿勢にもつながります。

また、キリスト教の精神を体現する人として、「共感性」や「共苦性」も身に付けてほしいと考えています。社会の片隅で生きる人々に寄り添い、悲しみや苦しみを分かち合い、声なき声を聴くことができる人こそが、立教が目指す人物像なのです。

RSLを履修した全学生が、直接的な社会貢献に関わる仕事に就くとは限らないでしょう。しかし、どんな職種に就いたとしても、訪れた場所の情景や接した人々の暮らしを思い起こせば、その地域が抱える問題を組み入れて仕事に向き合うことができるはずです。そうした回路を、社会へと巣立つ前に身に付けることもRSLの目的なのです。

立教生の中核的な存在に

小中高の児童・生徒には、ボランティア活動やフィールドワークに取り組んだ経験を踏まえ、ぜひ大学でRSLにチャレンジしてもらいたいと思います。主体的に課題に向き合う力や、他者と共に生きる力を備えた立教人としての素養を生かし、RSLで学びをより深く掘り下げてほしい。そして、大学における中核的な存在として、周囲の学生に影響を与える「アンバサダー」になってもらえたらと願っています。

今後は学院全体として海外型プログラムの充実を図るとともに、清里に加え、立教大学のサテライトキャンパスがある岩手県陸前高田市でも、オール立教で取り組むプログラムの開設を構想したいと考えています。受け継がれてきた社会連携教育を、より立教らしい形で拡充・推進し、広く社会に貢献できる人物を育成していきたいと思います。

立教大学 立教サービスラーニング(RSL)

社会貢献活動を通した学び「立教サービスラーニング(RSL)」は、講義系科目と実践系科目に大別されます。
学生一人一人の学修段階や興味関心に応じて、理論と実践の両面から学びを深めます。

RSL-コミュニティ(池袋)

外国人住民が増加し、グローバル化が進む池袋が学びのフィールド。「多文化共生と相互連帯」をテーマに、住民の生活課題の解決を図る仕組みや方法論の提案に地域住民と共に取り組みます。

RSL-コミュニティ(埼玉)

生活状況が厳しい世帯の中学生を対象に、埼玉県内で学習支援と家庭訪問活動を行う団体の事業に参加。学習サポートを通して、隠れた貧困と格差を取り巻く諸問題について理解を深めます。

RSL-ローカル(南魚沼)

新潟県南魚沼市の栃窪集落で、「雪ほり」と呼ばれる除雪作業を体験。地域住民との交流を通して、過疎・高齢化地域の課題と向き合い、地域活性や自然との共生について考えます。

RSL-グローバル(フィリピン)

フィリピンのトリニティ大学が展開する教育プログラムに参加し、社会格差が深刻化する地域で教育や医療の支援を実施。地域の人々に寄り添いながら、国際的な視点で貧困問題と向き合います。
※本記事は、『立教学院NEWS』Vol.30(2018年10月)の記事を再構成したものです。記事の内容およびプロフィールは、取材当時のものです。

プロフィール

PROFILE

西原 廉太

にしはら れんた / 立教学院副院長。立教大学文学部教授、大学院キリスト教学研究科委員長。
2018年よりキリスト教学校教育同盟第28代理事長

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