「思考力、判断力、表現力」を育む立教学院の教育

2018/05/31

OVERVIEW

変化の激しい現代社会は「正解のない時代」と言われ、児童・生徒たちには「受け身で対処するのではなく、自らの可能性を最大限に発揮して、よりよい社会と幸福な人生を創り出していく力」を身に付けることが求められています。
こうした社会変化を背景に、2020年度より小学校から順次、新学習指導要領が施行されます。そこでは、養うべき資質・能力として、「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の3つ柱が示されています。
立教学院の一貫連携教育では、「テーマをもって真理を探究する力」と「共に生きる力」を育むという教育目標のもと、授業時間に留まらず課外活動など学校生活全体を通して、一人ひとりが、前述の資質・能力を身に付けられる環境がすでに整っています。
今号では、各校の創立当初からいまに至るまで継続的に行われている、立教学院の「思考力、判断力、表現力等」に着目した教育についてご紹介します。

立教小学校

一人ひとりの命は、神さまから与えられた尊いものであり「生きていること自体が表現」であるといえます。子どもたちが自分のよいところを表現するためには、周りから受け入れられていると実感できることが大切です。そのため、神さまに認められているという安心感のなかで、「豊富な経験」と「学び合い」を通して、子ども同士、子どもと教師が、失敗を恐れず互いに表現し合える関係を、学校生活の中で築いています。
「毎日読む、毎日書く」を基本に、本学では毎日の「日記」と「朝読書」を大切にしています。また、1年生から6年生まで、週1時間「読書」の授業を設けています。「言葉」を、学び合うすべての学習の土台と位置づけ、日記や作文、さらに朗読や劇活動を通して自分を表現する学びを実践しています。また、「学習発表会」をはじめとした体験や学びの成果を披露する機会を豊富に設けています。

日記

1年生の絵日記から始まり、少しずつ文章量を増やす、段階的な指導を行っています。早い時期から自分の考えを表現するという目的だけでなく、子どもから親や先生へのメッセージともいえます。そのため信頼関係のなかで、伸び伸びと表現できる環境づくりを行っています。毎日継続することで子どもたちは、表現することを自然に身に付けていきます。

タブレット端末の活用

左:4年生「恵方巻き作り」 右: 6年生「関西フィールドワーク」

表現力を伸ばす手助けにタブレット端末(iPad mini)を活用しています。バランスの良い食事や食の大切さを学んで献立を考える「ベスト給食」、iPad miniで取材・撮影した素材をショートムービーに仕上げる「関西フィールドワーク」など、自分で考え、調べ、判断することを通して「情報モラル」も身に付きます。

70年目の学習発表会

左:目標に向かって必死に練習を重ねる姿を演じた一年生の劇「70じゃんぷ」  右:「世界の国々」をテーマに自分たちが選んだ国についてまとめた内容をクラスと一・二年生へ発表

70周年を迎えた2017年の「学習発表会」をいままで以上に子どもたちにとって主体的な学びの場とすることにしました。学年ごとのテーマに沿って学習してきた内容をまとめ、友だち・保護者・下級生に発表する1日となりました。

スピーチコンテスト

学校生活の中で身に付けた自分で考え、判断し、表現する力を発揮する場として、高学年で実施しています。全員がスピーチ原稿を作成し、クラスごとに代表に選ばれた2人が、校内で発表します。表現方法を工夫し、理論的に自分の意見を他の人に伝える力が養われます。

立教池袋中学校・高等学校

池袋中高では、新学習指導要領において獲得すべきとされる力について、かねてより意識して取り組んでいます。
生徒たちは、自由な発想を「そんな視点があったのか」と受け止めてくれる教員のもと、安心して、とことん突き詰めることにより、「テーマをもって真理を探究する力」を養います。また、生徒たちは、自分自身を表現することや、文化祭・体育祭などの学校行事や部活動を主体的に運営することを通して、互いをより深く知り、「共に生きる力」を身に付ける毎日を過ごします。
こうした取り組みが個別のスキルの獲得の場として存在するのではなく、有機的につながり、学校全体として機能しているのが特色です。授業だけではなく、学校行事、部活動も学びの場であるという教育理念が浸透し、学校生活全体で「主体的・対話的で深い学び」を実践しています。

自由研究ポスターセッション

夏休みの自由課題「自由研究」では、社会、理科をはじめ、数学や音楽、英語などさまざまな教科で、自由な発想に基づいた研究成果が提出されています。2017年度は、231点。優れた研究は教員や立教大学の学生のアドバイスを受けながら内容をブラッシュアップし、学園祭「R.I.F.」において、ポスターセッションで発表し、プレゼンテーション能力の育成も行っています。
自由研究
社会 
中学1年 視覚障碍者のための駅ホームの安全性向上について
中学2年 敗者ながら英雄となった真田信繁
高校2年 ディズニーから学ぶテーマパークの経営戦略
理科
中学1年  クモの生態観察
中学1年 世界のミサイル(核爆弾と防衛システム)
中学3年 ザリガニ4年目の研究
数学
中学2年 勝利の条件~先発投手編~
高校1年 円周率が3.14の理由
高校3年 1/400の確率は10000回試行する と収束するのか
音楽
中学1年 曲作りを知り、イメージや出来事を曲 にする
英語
中学1年 英語歌詞の翻訳
など

英語プレゼンテーション

中学3年生の英語の授業で行います。プレゼンテーションとは何か、効果的なプレゼンテーションはどのようなものかなどを学び、全員が決められたテーマのもと、自由な発想と表現力を駆使して発表を行います。発表は授業時間中に行われ、他教科の教員も見学に訪れるなど、全学的な取り組みです。

全生徒が取り組む卒業研究論文

全生徒が執筆し、発表する「卒業研究論文」は高校3年間の集大成です。高校1年生からテーマを意識し、高校2年生の夏休みにテーマを設定。その後、メンターの教員とテーマについて検討し、深めていきます。高校3年生では週2時間の卒論制作の授業で、論文について学び、資料収集や調査などを行いながら論文を執筆します。卒業論文の意義は、肯定否定双方の意見に耳を傾けながら、自ら考え、判断し、新たな提案や検証を行うところにあります。一つの筋道の通った文章を表現するための日本語を磨き、最後のプレゼンテーションでは、限られた時間のなかで、本当に自分が伝えたいことを精選し、表現する力を養います。
卒業研究論文タイトル(一部)
・日本における可視化された取り調べの姿とは
・在留外国人子弟の教育問題~包括的な新教育制度に向けた提言~
・ティーチング・アシスタント制度の普及には何が必要か
・アニメツーリズムによるまちおこしを大洗町から考える
・効率的なピッチングフォームを生み出すための一考察
・能と手猿能について
・男性の育児休業の取得をどのように促進するべきか
・iPhoneとは何なのか
・音楽が人間の心情や生活に与える影響について
・女性の活躍が遅れている国日本
・英語のリスニング・ストラテジー
・ロックンロールの熱狂と抵抗
など

立教新座中学校・高等学校

「共に生きる力を備えたグローバルリーダーの育成」を実践する新座中高では、個々の可能性を引き出し、広げる教育を展開しています。
学校生活のさまざまな場面で、生徒自らが考え、判断・行動する機会を多く設けることで、自立した人間として成長する力を伸ばします。単に正しい解答を得るだけでなく、そこにたどり着く過程において、仲間や教師と学び合うことを大切にしています。そういった経験の積み重ねにより、「真理を探究する力」を育成し、世界の人々と「共に生きる力」を備えたグローバルリーダーへと成長していきます。また、「豊かで的確な日本語の能力」の習得を教育目標の一つに掲げ、中学入学時からさまざまな取り組みを実践しています。

表現力、発信力を鍛える

英語ディベートの授業の様子

中学1年生の「国語(表現・書写)」の授業では、「調べ学習」「討論」「文集制作」を行い「表現」に関わる基礎的な力を獲得することに早い段階から取り組み、高校での発展的な学習に備えます。高校では、自由選択科目に「英語ディベート入門」や「英語表現・作文」などの講座があり、日本語だけでなく、外国語での表現力、発信力も養います。

リーダーシップ教育

「情報の科学」でのプレゼンテーションの様子

中学ではリーダーシップの基礎として、3年生の校外研修旅行に向け、団体行動について考える時間を設けています。高校2年生の「情報の科学」では、プレゼンテーションを通してリーダーシップを身に付けます。生徒たちは、資料制作や段階的にプレゼンテーションを行う過程で、振り返りとフィードバックを繰り返し、リーダーシップを養っていきます。
また各クラブの代表者向けにリーダーシップ研修等も実施。自ら問題解決に主体的に取り組み、個人の価値観や文化の違いを受け入れながら、「共に生きる力」を備えたリーダーシップを養います。

自由選択科目と卒業研究論文

卒業研究論文(英文要旨)

高校3年生は、それぞれの興味・関心や各自の進路を考えて自由選択科目から講座を選択し、主体的に学び、卒業研究論文の執筆にも取り組んでいきます。
自由選択科目は、大学での研究につながる専門分野を学ぶ講座など82講座(2018年度)から、多様な学習・経験を積み重ねていきます。
総合的な学習の集大成として取り組む卒業研究論文は、研究能力と自己表現力の向上につながります。執筆後は、要旨を英語で表現することに取り組むことをすすめています。
2018年度自由選択科目講座名(一部)
・日本のことばと文化
・国際関係の研究
・"観光学部と作る、志賀高原の観光ガイド"
・異文化コミュニケーションと心理学
・英語表現・作文
・英語ディベート入門
・Hawaiian Culture
・聖書と人権
・医療と倫理
・日本の伝統手芸
・現代家族を考える
・メディア・リテラシー
・メディアとジャーナリズム
・スペイン語
・朝鮮語
・ロシア語
・アラビア語
・ラテン語
・ドイツ語
・フランス語
・中国語
・イタリア語
など
※本記事は、『立教学院NEWS』Vol.29(2018年5月)の記事を再構成したものです。記事の内容およびプロフィールは、取材当時のものです。

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